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最新ガイドライン準拠 小児科診断・治療指針 改訂第3版

専門領域を踏破する小児科診療のスタンダードを強力アップデート専門分野エキスパート370名の編集・執筆による小児科主要領域350テーマから成る全訂版。他科に比べエビデンスが不足している場面に遭遇することが多い小児科診療で、ガイドラインによる科学的根拠と専門医の経験を融合させた実践的な診断・治療指針。医学・医療の進歩とともに細分化・複雑化する小児科専門30領域を正確かつ簡潔にまとめ、処方例・実践例を挙げて紹介。自施設で対応できることを見極め、他施設・他科と協働するための新しい知識とスキルを提供。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する最新ガイドライン準拠 小児科診断・治療指針 改訂第3版定価30,250円(税込)判型B5判(並製)頁数1,216頁(写真・図・表:1,200点)発行2024年4月総編集加藤 元博(東京大学 教授)ご購入はこちらご購入はこちら

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メニエール病は臨床症状によってサブタイプに分類可能

 メニエール病は、特有の臨床症状を特徴とするサブタイプが混在する不均一な疾患であるという研究結果が、「The Laryngoscope」に1月6日掲載された。 英ノーフォーク・ノリッジ大学病院NHS財団トラストのJohn Phillips氏らは、メニエール病患者を対象とした観察研究において、類似する特徴やリスク因子を共有する患者をグループとして分類するクラスター分析を実施し、明確な臨床サブタイプを特定した。研究にはメニエール病と診断された患者411人が登録された。 その結果、2つの主要なクラスターが特定された。耳の感染症と診断された患者は、クラスター1に属する可能性が高かった(オッズ比0.30)。一方、両耳の耳鳴り(同11.89)、低音の耳鳴り(同21.09)、ストレスが回転性めまい発作の誘因になるとの報告(同14.94)を有する患者は、クラスター2に属する可能性が有意に高かった。また、良性発作性頭位めまい症(同13.14)、自己免疫疾患(同5.97)、うつ症状(同4.72)、片頭痛(同3.13)、薬剤アレルギー(同3.25)、花粉症(同3.12)と診断された患者も、クラスター2に属する可能性が有意に高かった。 著者らは「メニエール病が臨床サブタイプのスペクトラムとしてどのように存在するのかを認識することは、その根底にある病態生理学的機序を解明する今後の研究を導き、特定の治療戦略を標的とし、内耳の微小環境の生理機能への理解を深めるための鍵となる」と述べている。

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アトピー性皮膚炎は小児の学習・記憶に影響するか?

 米国で行われた横断研究において、アトピー性皮膚炎を有する小児は、学習障害と記憶障害が報告される割合が高いことが示唆された。ただし、その関連性は、主に注意欠如・多動症(ADHD)や限局性学習症といった神経発達症を併存する子供に限定されることも示された。米国・メリーランド大学医学校のEmily Z. Ma氏らが、JAMA Dermatology誌オンライン版2024年3月6日号で報告した。先行研究でアトピー性皮膚炎は小児の認知機能障害と関連することが示唆されているが、それらの研究では認知機能の評価を、症状ではなく神経発達の診断で代用している。したがって、アトピー性皮膚炎の小児が、認知機能障害のリスクが高いかは不明であった。著者は、「今回の結果から、アトピー性皮膚炎を有する小児の認知機能障害に関するリスク分類を改善できる可能性があり、アトピー性皮膚炎と神経発達症がある小児では認知機能障害の評価を優先すべきであることが示唆された」と述べている。 研究グループは、米国の小児を対象とした横断研究を実施し、アトピー性皮膚炎と認知機能に関する症状(学習障害や記憶障害)との関連性を評価した。また、その関連性が神経発達症の併存(ADHD、発達遅延、限局性学習症)の有無によって異なるか調べた。対象は知的障害または自閉症を有さない17歳以下の小児とし、US National Health Interview Survey 2021のデータを用いた。 アトピー性皮膚炎の定義は、現在診断されているか、以前に医療の専門家によって医学的に確認されたことがある場合とした。学習や記憶の障害は、小児の保護者の報告に基づき評価した。 主な結果は以下のとおり。・加重合計6,973万2,807例のうち、922万3,013例(13.2%)がアトピー性皮膚炎であった。・アトピー性皮膚炎を有する小児は、アトピー性皮膚炎を有さない小児と比べて学習障害(10.8%[95%信頼区間[CI]:7.8~15.8]vs.5.9%[5.1~6.9]、p<0.001)、記憶障害(11.1%[8.0~15.9]vs.5.8%[4.9~6.9]、p<0.001)がより多くみられる傾向があった。・多変量ロジスティック回帰モデル(社会人口学的要因、喘息、食物アレルギー、季節性アレルギーや花粉症で調整)において、アトピー性皮膚炎を有する場合、学習障害(調整オッズ比[aOR]:1.77、95%CI:1.28~2.45)、記憶障害(1.69、1.19~2.41)がみられる割合が高かった。・神経発達症の有無による層別解析では、アトピー性皮膚炎は、何らかの神経発達症がある小児の記憶障害がみられる割合が2~3倍高く(aOR:2.26、95%CI:1.43~3.57)、ADHD(2.90、1.60~5.24)、限局性学習症(2.04、1.04~4.00)がある小児でも記憶障害がみられる割合が高かった。・一方で、神経発達症のない小児においては、アトピー性皮膚炎は学習障害や記憶障害との関連は認められなかった。

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背中を叩いて助かった!【Dr. 中島の 新・徒然草】(521)

五百二十一の段 背中を叩いて助かった!天気のいい日は花粉がきつい! 日本はいつからこんな大変な国になってしまったのでしょうか。私が小学生の時には、花粉症などという言葉はありませんでした。記憶に残る最初の花粉症は大学を卒業した頃くらい。以来、花粉症がひどく出る年とそうでない年があり、コロナ禍の間は比較的マシでしたが、今年はひどくなりそうな予感があります。近隣清掃の時にこの話をすると、他の人たちも賛同してくれました。さて、前々回に、ファイブ・アンド・ファイブ(背部叩打法5回とハイムリック法5回)の話をしました。ちょっとおさらいをしておきましょう。もし誰かが喉に食べ物を詰めた場合、意識があれば最初に背部叩打法を試してみます。5回まで試してみて、それでだめならハイムリック法(腹部突き上げ法、上腹部圧迫法)を5回まで試してみるというものです。実は先日のこと。親戚の叔母さんが遠い昔に背部叩打法を実際にやったことがある、ということを耳にしました。もう5~60年も前の昭和の時代。叔母さんの隣に住んでいた奥さんの叫び声が聞こえてきたのだそうです。「助けて―、ター坊がリンゴを詰めて窒息した!」ター坊というのは隣の家の2歳になる長男です。その声を聞いた叔母さんは、慌てて隣の家に向かいました。玄関に飛び込んでいったら、顔面蒼白で床にぐったりと倒れているター坊が!そこで叔母さんは左手でター坊の両足をつかんで逆さまにしました。背中をパンッ、パンッ、パンッと叩くと、リンゴの塊がポロッと口から出てきたそうです。幸いなことに、ター坊は「ハアーッ、ハアーッ」と言いながら息を吹き返しました。背部叩打法を知っていたのかを叔母さんに尋ねたところ、「よくは知らなかったけど、何となく知っていた」ということでした。知識というのはそんなものかもしれません。因みに隣の奥さんは教会に熱心に通う信徒さんだったのですが、この時ばかりは神様ではなくて叔母さんに激しく感謝してくれたそうです。現在、アラ還のター坊はどこかの会社の偉いさんになっているのだとか。で、今になって叔母さん曰く。「あれは余所の子だったからできたんじゃ」もし自分の子だったら気が動転してしまって逆さまにすることもできないし、背中も叩けなかっただろうということです。「私も手探りで子育てをしていたけど、あのことがあってから自信がついたのよ。何でもやってみるもんじゃね」それにしても背部叩打法って有効だったんですね。あらためて感心しました。私もいざという時のために心づもりをしておきます。最後に1句花粉なき 昭和の事件 思い出す

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第204回 アドレナリンを「打てない、打たない」医者たちを減らすには(前編) アナフィラキシーが呼吸器系の症状や循環器症状が単独で起こった場合は判断が難しい

インタビュー: 海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)昨年11月8日掲載の、本連載「第186回 エピペンを打てない、打たない医師たち……愛西市コロナワクチン投与事故で感じた、地域の“かかりつけ医”たちの医学知識、診療レベルに対する不安」は、2023年に公開されたケアネットのコンテンツの中で最も読まれた記事でした。同記事が読まれた理由の1つは、この事故を他人事とは思えなかった医師が少なからずいたためだと考えられます。そこで、今回と次回はこの記事に関連して行った、日本アレルギー学会理事長である海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)へのインタビューを掲載します。愛西市コロナワクチン投与事故の背景には何があったと考えられるのか、「エピペンを打てない、打たない医師たち」はなぜ存在するのか、「アナフィラキシーガイドライン2022」のポイントなどについて、海老澤氏にお聞きしました。(聞き手:萬田 桃)アドレナリンは“心肺蘇生に使う薬”というイメージを抱いている方がまだまだ多い――この記事が多くの読者に読まれた理由について、先生はどうお考えですか。海老澤タイトルにあるように、「エピペンを打てない、打たない医師」は実際に少なくなく、そうした方が読んだということが1つ考えられます。また、ワクチンの集団接種会場ということで、医師会などから依頼されて医師等が接種を行うわけですが、アナフィラキシーなど、万が一のことが起こった場合に、その場ですぐに全身管理ができるような体制は多くの会場で整っていなかったと考えられます。そういった意味で、「自分にも起こり得た事件だった」と捉えた方も多かったのかもしれません。――「エピペン」こと、アドレナリンを「打てない、打たない医師」はまだ結構いるのでしょうか。海老澤アドレナリンの筋肉注射については、僕らの世代から上の医師だと、”心肺蘇生に使う薬”というイメージを抱いている方がまだまだ多い印象です。最近は、医師国家試験でもアナフィラキシーの時のアドレナリン筋注は第一選択だということが設問になるくらいで、若い医師たちには十分浸透していることだと思います。しかし、一方で少し世代が上になると、「まずアドレナリン筋注」とは考えない医師は存在します。使った経験がない人だと躊躇してしまうことはある――今回のコロナワクチンのアナフィラキシーに最初に対応した医師は、事故報告書によれば「内科医、医師歴5年以上10年未満」となっていました。海老澤比較的若い医師だったのですね。今回のケースに当てはまるかどうかはわかりませんが、アナフィラキシーの患者にこれまで遭遇したことがある医師は、アナフィラキシーの患者を目の前にして、すぐに筋注しても問題はないと理解していると思うのですが、使った経験がない人だと躊躇してしまうことはあると思います。これまでにアナフィラキシーの患者さんを1人も診たことがなく、対処法に慣れていない医師は全国で少なくないと思います。仮に病院での治療中に起きたアナフィラキシーだったら、筋注後すぐにICUに運びルートを取り、アドレナリンを希釈して投与することも可能です。酸素投与もできます。また、手術中であればすでにルートが取れているので、即時対応が可能です。しかし、アナフィラキシーの初期対応としてアドレナリン筋注(0.1%アドレナリンの筋肉内注射、またはアドレナリン自己注射用製剤〈エピペン0.3mg製剤の投与〉)が第一選択だというのは基本中の基本です。もちろん、糖尿病や高血圧、動脈硬化など基礎疾患があるような方だと、アドレナリンを打って血圧が急上昇して脳出血を起こしたりするリスクは全くゼロではありません。そうしたリスクとベネフィットを考えて投与するわけですが、打って害になることは少ないと思います。アナフィラキシーが呼吸器系の症状や循環器症状が単独で起こった場合は判断が難しい――報告書によれば、看護師の1人は、アナフィラキシーの可能性を考え、アドレナリン1mgプレフィールドシリンジに22ゲージ針を付け、医師の指示があればいつでも筋注できるよう準備をしていましたが、「医師の判断を尊重するため、アドレナリンの準備ができていることを積極的に伝えようとはしなかった」とのことです。海老澤なるほど。ただ、そこは医師の判断ですから難しいですね。あともう1つ考えられるのは、アナフィラキシーの症状が典型的なパターンではなく、それが見逃しにつながった可能性です。――報告書では、「接種前から体調不良、呼吸苦があったようだという看護師からの情報と、粘膜所見、皮膚所見、掻痒感、消化器症状など『アナフィラキシーで典型的な症状』がなかったことから、女性の病態はアナフィラキシーの可能性が低いと判断し、アドレナリンの筋肉内注射を第一治療選択から外した」と書かれています。海老澤アナフィラキシーが呼吸器系の症状や、血圧低下などの循環器症状が単独で起こった場合は、判断が難しいというのは確かにあります。2022年に改訂した「アナフィラキシーガイドライン」1)では、診断基準が2つに集約されました。1つは、「皮膚、粘膜、またはその両方の症状(全身性の蕁麻疹、瘙痒または紅潮、口唇・舌・口蓋垂の腫脹など)が急速に(数分~数時間)で発症した場合」。もう1つが「典型的な皮膚症状を伴わなくても、当該患者にとって既知のアレルゲンまたはアレルゲンの可能性が高いものに曝露された後、血圧低下または気管支痙攣または咽頭症状が急速に(数分〜数時間)で発症した場合」となっています。この2番目は、循環器症状と呼吸器症状の単独の場合を言っているわけです。アナフィラキシーの基本は皮膚症状なのですが、典型的な皮膚症状がなくても、アナフィラキシーを疑う場面で、血圧低下または気管支攣縮、咽頭症状などの呼吸器症状があればアドレナリンを打つ、というのが2022年改訂の大きなポイントです。ワクチンもそうですが、薬剤等の場合にこうした呼吸器症状、循環器症状単独のアナフィラキシーが起こりやすく、かつ症状が進行するスピードも早く時間的余裕もないので、そこはとくに注意が必要です。重症の方の場合、アドレナリン投与1回では効かないこともある――今回の事故で「打たなかった」背景にはいろいろな原因が考えられるわけですね。海老澤今回の事例に直接当てはまるかどうかは軽々に言えませんが、「アナフィラキシーの典型的な症状ではなく判断が難しかった」「アナフィラキシーに対する医療者の経験値、慣れが足りなかった」「何か起こった場合に対応する医療体制が乏しかった」ことなどが教訓として挙げられると思います。ただ、症状の進行はものすごく速かったと考えられるので、アドレナリンの1回の筋注で軽快していたかどうかはわかりません。重症の方の場合、アドレナリン投与1回では効かないこともあります。それでもダメな場合は、ルートを取って輸液したり、酸素を投与したりと全身管理が必要になってきます。救命できるかどうかは、そういった一連の流れの中で決まってきます。(この項続く)(2024年1月23日収録)【事故の概要】2022年11月、愛知県愛西市の集団接種会場で、新型コロナワクチンを接種した女性(当時42)が直後に容体が急変し死亡しました。愛西市がまとめた報告書2)によれば、接種4分後から女性に咳嗽と呼吸苦が発現したにもかかわらず、看護師らは「ワクチン接種前からマスク着用の圧迫感による過呼吸発作状態にあったもの」と解釈していました。また、体調不良者が出たことで対応を依頼された医師も「接種前から体調不良、呼吸苦があったようだ」という看護師からの情報と、粘膜所見、皮膚所見、掻痒感、消化器症状など「アナフィラキシーで典型的な症状」がなかったことから、女性の病態はアナフィラキシーの可能性が低いと判断し、アドレナリンの筋肉内注射を第一治療選択から外してしまいました。女性は接種14分後に心停止、3次救急病院に搬送されるも到着時にはすでに心肺停止状態で、心肺蘇生を試みた後、死亡が確認されました。報告書で愛西市医療事故調査委員会は、「ワクチン接種後待機中の患者の容体悪化(咳嗽、呼吸苦の訴え)に対し、看護師らがアナフィラキシーを想起できなかったこと、問診者に接種前の患者の状態を確認することなく、患者は接種前から調子が悪かったと解釈したことは標準的ではなかった。また、その情報に影響を受け、ワクチン接種後患者の容体変化に対し、アドレナリンの筋肉内注射が医師によって迅速になされなかったことは標準的ではなかった」とし、「本事例は、ワクチン接種後極めて短時間に患者が急変し、死亡に至ったものである。非心原性肺水腫による急性呼吸不全及び急性循環不全が直接死因であると考えられ、この両病態の発症にはアナフィラキシーが関与していた可能性が高い。本事例は短時間で進行した重症例であることから、アドレナリンが投与されたとしても救命できなかった可能性はあるが、特に早期にアドレナリンが投与された場合、症状の増悪を緩徐にさせ、高次医療機関での治療につなげ、救命できた可能性を否定できない」と結論付けました。参考1)アナフィラキシーガイドライン2022/日本アレルギー学会2)事例調査報告書/愛西市

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モラハラにご用心!【Dr. 中島の 新・徒然草】(520)

五百二十の段 モラハラにご用心!3月といっても雪が降る一方、クーラーを入れるくらい暑くなることもあります。三寒四温とはまさしくこのこと。そうこうしているうちに花粉の季節が忍び寄ってきました。私の場合、2回続けてクシャミが出たら、その後に鼻水が止まらなくなります。情けない!さて、先日のことです。脳神経外科外来にやってきた患者さんは50代の女性でした。診察中にふと私が「何かストレスはありますか?」と尋ねた時のこと。「ストレスはありません!」という答えが返ってきました。普通は誰でも何かしらのストレスを抱えているはず。おそらく私が困惑した表情をしていたのでしょう。彼女は「離婚してストレスがなくなりました」と続けたのです。そのあまりにもキッパリとした言い方は、むしろ素人が想像できない闇の存在を示唆しています。患者「夫が、いや元・夫が私にとっての最大のストレスだったんです」ふむふむ。患者「ああいうのをモラハラって言うんでしょうね、私のことを全否定するんです」モラハラというのは最近よく耳にする言葉ですが、いまひとつパワハラとの区別がつきません。後で調べてみると、パワハラというのはパワーハラスメント、立場の優位性を利用したハラスメントで、これはよく知られています。職場で上司が部下に対して行うものが典型的です。対してモラハラはモラルハラスメントで、立場が同等の者の間でも起こるものとされています。その性質上、家庭で起こりやすいハラスメントです。とはいえ、これではよくわかりません。するとこの患者さん、尋ねるまでもなくいくつかの例を挙げてくれました。患者「『俺が食わしてやっているんだ』とか『専業主婦は楽でいいよな』とか、ネチネチと言われるんです」中島「それ、昭和の頑固親父じゃないですか!」患者「会社では頑固でも家では優しい、とかだったら良かったんですけど」中島「たぶん僕よりもちょっと若いくらいのご主人ですよね」患者さんにご主人の年齢を確認してみると、やはり私よりも少し若いくらいでした。中島「うーん、僕も知らない間に昭和を引きずっているかもしれん」思わず言ってしまいました。患者「先生は大丈夫ですよ」中島「いやいや、人の振り見て我が振り直せと言いますからね」すると彼女は他にも例を挙げ始めました。患者「私の目の前でタバコを吸うんですけど、『やめて!』と言っても聞く耳を持たないんです」中島「せめて吸う時は家の外にしてもらいたいですね」患者「そうなんですよ。私が怒った時だけやめるけど、1週間したら元に戻ってしまうんです」なるほど。中島「参考になりました。僕も『女房に何か言われた時には聞き流してはならない』と肝に銘じておきます」医療現場でやかましく言われている患者対応と一緒です。職場でも家でも傾聴が大切!中島「でも離婚してしまったら経済的なこととか大変でしょう」患者「上の子が社会人で下が高校生ですけど、親子3人で仲良く暮らしています」それは何より。患者「養育費なんか、送ってくるのは雀の涙です。でも、せいせいしました」中島「離婚の原因といったら浮気やDVみたいなイメージがありましたが、モラハラも言葉の嫌がらせってことですか、勉強になりました」他にもアルコールやギャンブル、借金など、ネガティブなことをいろいろと聞かされるのが外来診療の常です。こういった問題について何一つ思い当たらなければ、それだけで十分に立派だと最近は思うようになりました。普通を実現するのは案外難しいことですね。読者の皆さまはどのようにお考えでしょうか?最後に1句花粉きて 鼻水垂らして 傾聴す

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「将来が漠然と不安…」、専攻医の悩みに大塚篤司氏の答えは?【Dr.大塚の人生相談】

研修医2年目のものです。来年度から自大学の皮膚科に入局予定ですが、将来に対して漠然とした不安感を抱いています。皮膚科の専門医になるための5年間の研修に関して、本当にやっていけるかどうかと皮膚科を研修でまわっていて感じるときがあります。指導医の先生が「これはHairy-Hairy病だね」「肉芽腫性口唇炎をみたらMelkkerson-Rosenthal症候群を疑うよ」と仰ったときに「そうなんですね」と返しますが、「なんやそれ」と心の中では思っています。「なんとかなるやろ」と楽観的に思う自分もいるのですが、内心では不安感を抱いているのは事実です。それに加えて、医療費をめぐる医療従事者への当たりの強さも心配な面もあります。そこで、これからの時代を生きる専攻医に向けて、アドバイスといいますか、指針のようなものがあればご教授いただけると幸いです。(今回の相談者:たむさん)ぼくはいろんなところでコラムとかエッセイを書いて、過去の出来事を振り返ったりするのですが、じゃあ医局員との飲み会で自分のことを語るかというとほとんど何も言いません。先日、医局で忘年会をやったんですね。新入局員だけでなく、外来の看護師さんとか受付さんとかみんなに声をかけて。で、たぶんぼくが一番喋らずにその会は終了しました。まぁ、コミュ障というのもあるのですが(笑)、教授が語り始めると若手が喋れなくなるし、おじさんの武勇伝とか飲み会で披露されてもウザいだろうし、だからといって二十代の先生たちを楽しませるだけの話術と豊富なテーマもあるわけではないし、などと考えたら全く喋らずにただただ気配を消すしか正解が思い当たらなかったのです。忘年会の帰り道、「こんな性格で教授やっていけるのか?」とさすがに不安になりました。という感じで、教授になったらなったで将来の不安もあります。臨床も完璧かというと決してそんなわけではなく、知らない病気だってたくさんあります。Laugier-Hunziker-Baran症候群って聞いたことありますか?口唇や口腔粘膜に黒色斑が多発して、手足の爪に色素線条ができる疾患なんですが、ぼくはこの病気の読み方がいまだに正解をわからずにいます。いや、すみません。読めますけど、カンファレンスでは発音に自信がないから「バラン症候群」って言っちゃいます。ときどき「バラン症候群って正式名称なんだっけ?」とみんなに聞きます。もうすでに3回くらいカンファレンスで確認したことがあるくらい、こういう病名を覚えるのが苦手です。わりとポンコツなんです。でもね、医局の中でぼくが一番アトピー性皮膚炎に関しては詳しいと思います。教授だから当たり前だろう、っていうツッコミが聞こえてきますが、これが当たり前じゃないんです。アトピーに一番詳しくなるには、アトピーについてこれまでずっと研究したり、患者さんをみてきたからです。そうなったのも、アトピーについてもっと知りたいと思ったことがあったからだし、アトピー患者さんを治したいという強いモチベーションの結果なんですよね。相談者さんにいま見えている景色は、いろんな思いの末に出来上がった先生たちであり、その先生たちの努力のあと(途中)です。まだ皮膚科の研修もはじまっていない、自分がなにを専門にすればいいかもわからない状態で、自信満々の方が怖いですしヤバいです。きっとね、この先、患者さんと接していく中で、「もっと自分にできることがあったのでは?」という後悔や反省や「面白い!」と感じることに出会うと思います。そのときに、猛烈に頑張ったらいいと思います。日本で一番この病気に詳しくなってやろう、くらいの気概で勉強すれば、医局で一番詳しくなれます。そういう経験をひとつひとつ積み重ねていくと、いつの間にか「頼りになる皮膚科医」であり「かっこいい先輩」になれるんだと思います。臨床を通じて、心が動いた瞬間を大事に、そこで決して妥協しないこと。振り返ったときに後悔がないように全力を尽くすこと。ありふれたアドバイスですけど、一緒にがんばろうぜ。皮膚科医になったらぜひ声をかけてください。その時は一緒に飲みましょう!(コミュ障だからリアルではほとんどしゃべらないですけどね。笑)

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2月20日 アレルギーの日【今日は何の日?】

【2月20日 アレルギーの日】〔由来〕1966(昭和41)年の今日、石坂 公成氏、石坂 照子氏がIgE(免疫グロブリン)を発見したことにちなみ、日本アレルギー協会により制定。同協会では今日を中心とした1週間を「アレルギー週間」と定め、この期間を中心にアレルギーに関する各種啓発活動を行っている。関連コンテンツアトピー性皮膚炎の診療で役立つTIPSどうする?食物アレルギーの「学校生活管理指導表」【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】卵アレルギーが不安…、離乳食開始へのアドバイスは?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】HRTってなあに?【患者説明スライド】食物アレルギーの小児患者へ安全・有効な経口免疫療法/国立成育医療研究センター

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ナノ粒子を用いた新治療でアレルギー反応を抑制できる?

 新たな標的療法により、ピーナツや花粉、猫など特定のアレルゲンに誘発される反応を抑制できる可能性が、米ノースウェスタン大学生体医工学分野のEvan Scott氏らによる研究で明らかにされた。この治療法は、ナノ粒子を用いて、即時型アレルギー反応を引き起こす免疫細胞である肥満細胞(マスト細胞)を不活性化するもの。マウスを用いた実験ではアレルギー反応を100%防ぐことに成功したという。この研究結果は、「Nature Nanotechnology」に1月16日掲載された。 人の体のほぼ全ての組織に存在する肥満細胞は、アレルギー反応に深く関与することが知られているが、血流の調節や寄生虫との戦いなど、他にも重要な役割を担っている。そのため、アレルギー反応を抑制する目的で全ての肥満細胞を除去してしまうと、健康を保つために有用な他の反応にまで悪影響が及ぶ可能性がある。 肥満細胞は、アレルゲンに反応してヒスタミンと呼ばれる生化学物質を体内に放出する。ヒスタミンは炎症反応を促進し、それが皮膚のかゆみ、くしゃみ、涙目などのアレルギー反応を引き起こす。アレルギー反応に対する治療薬としては、抗ヒスタミン薬のような症状を治療するものがあるだけで、肥満細胞を標的にしたものはないのが現状だ。 論文の共著者でノースウェスタン大学アレルギー・免疫学分野のBruce Bochner氏らは過去の研究で、肥満細胞上に高度かつ選択的に発現する抑制性の受容体であるSiglec-6(Sialic acid-binding Ig-like lectin6)の存在を特定していた。この受容体を抗体の標的とすることができれば、肥満細胞を選択的に阻害してアレルギー反応を抑制できる可能性があるが、単に抗体を導入するだけでは効果が得られなかった。 そこで、Scott氏らは今回、動的なポリマー鎖で構成されたナノ粒子(polypropylene sulfone nanoparticle;PPSU NP)を用いることにした。安定した表面を持つ通常のナノ粒子とは異なり、PPSU NPはタンパク質にさらされると、独自にその向きを変えることができる。タンパク質である抗体は、ナノ粒子の表面に結合すると構造が変化して生物活性を失うことがある。しかし、同氏らがPPSU NPと抗体を混ぜ合わせたところ、抗体は安定的にPPSU NP表面に吸着し、その構造や生物活性が損なわれないことが確認された。 次に、PPSU NPの表面に抗Siglec-6抗体などの抗体や特定のアレルゲンを持つナノメディシンを作成した。その原理は以下のようなものだ。すなわち、ナノメディシンは、アレルギーの原因となるIgE抗体を持つ肥満細胞に結合すると同時に、表面の抗体が肥満細胞上のSiglec-6受容体と結合し、肥満細胞の反応を抑制する。Siglec-6受容体は主に肥満細胞にのみ存在するため、ナノメディシンは他のタイプの細胞には結合できず、副作用を最小限に抑えることができる。Scott氏は、「この相反する2つのシグナルが与えられると、肥満細胞は自ら活性化すべきではないと判断し、特定のアレルゲンに対する反応を選択的に停止させる」と説明している。 この治療法の効果を確認するために、Scott氏らは組織にヒト肥満細胞を持つマウスを作り、これをアレルゲンにさらすと同時にこのナノ治療を行った。その結果、アナフィラキシーショックを起こしたマウスはおらず、全てのマウスの生存が確認された。Scott氏は、「アレルギー反応をモニタリングする最も簡単な方法は、体温の変化を追跡することだが、実験で使ったマウスに体温の変化は見られなかった。マウスは健康なままで、外見上、アレルギー反応の兆候が認められることもなかった」と話している。 ただし、動物実験で得られた結果がヒトを対象にした試験でも得られるとは限らない。専門家は、さらなる研究が必要だとの見方を示している。研究グループは、マストサイトーシスと呼ばれる肥満細胞の希少がんを含む、他の肥満細胞関連疾患の治療法について研究する予定であると話している。

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事例041 コレクチム軟膏の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説2ヵ月以上湿疹の続く乳児をアトピー性皮膚炎と診断し、デルゴシチニブ(商品名:コレクチム)軟膏を処方したところ、C事由(医学的理由による不適当)が適用されて査定となりました。査定理由を調べるために添付文書を参照してカルテと照らし合わせました。用法および用量、関連する注意に記載されている範囲内で使用されていました。ここまでにおいて査定の理由が見当たりません。さらに読み進めると、「9.特定の背景を有する患者に関する注意」の「9.7小児等」に、「低出生体重児、新生児及び6か月未満の乳児を対象に、有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない」と記載がありました。言い換えると「6か月未満の乳児等には安全性が認められていない」ことが注意書きされていたのです。患者は6ヵ月未満の乳児です。使用月齢に達していないことを理由に査定となったことが推測できます。コンピュータ審査において添付文書の奥深くまで審査ロジックが組まれていることに驚きを禁じ得ませんでした。医師には、このことを伝え、調剤システムに使用月齢制限を登録して査定対策としました。

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花粉症、舌下免疫療法を希望する患者が来院【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第17回

花粉症、舌下免疫療法を希望する患者が来院講師日本医科大学多摩永山病院 病院教授 後藤 穣 氏【今回の症例】33歳女性。約10年前より2月下旬から4月上旬にかけて水様性鼻漏、くしゃみ、目のかゆみを自覚している。前年までは市販薬で治療していたが効果が乏しいために、2月初めにスギ花粉症に対する根治的治療として舌下免疫療法を希望し、クリニックを受診した。

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花粉症重症化を防いで経済損失をなくす/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

 花粉飛散が気になる季節となった。今後10年を見据えた花粉症への取り組みについて、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(理事長:村上 信五氏)は、都内で「花粉症重症化ゼロ作戦」をテーマにメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、花粉症重症化の身体的、経済的、社会的弊害と鼻アレルギー診療ガイドラインの改訂内容、花粉症重症化ゼロ作戦の概要などがレクチャーされた。アレルギー性鼻炎の経済的損失は年19万円 はじめに村上氏が挨拶し、花粉症は現在10人に4人が発症する国民病であること、低年齢での発症が増加していること、花粉症により経済的損失も多大であることなどを語り、同学会が取り組む「花粉症重症化ゼロ作戦」の概要を説明した。 続いて岡野 光博氏(国際医療福祉大学耳鼻咽喉科学 教授)が「花粉症重症化の意味するもの」をテーマに花粉症による社会・患者の損失について説明した。 2023年に政府は花粉症は国民病として関係閣僚会議を立ち上げ「発生源対策」「飛散対策」「発症等対策」の3本柱で対策を施行することを決定した。具体的には、診療ガイドラインの改訂や舌下免疫療法(SLIT)の推進、リフィル処方箋の活用推進などが予定されている。 花粉症の主な症状である鼻、眼、全身、のど症状について述べ、1日にくしゃみと鼻かみが各11回以上、鼻閉による口呼吸が1日のうちでかなりを占める場合は「重症」と評価し、花粉症が重症化するとQOLが著しく悪化すると説明した。QOLの評価指標であるEQ-5D-5Lを用いた値では、重症花粉症のQOLは糖尿病や骨折、乾癬よりも悪いことが報告された。一例としてアレルギー性鼻炎(AR)の研究ではあるが、重症化が患者の健康状態と労働生産性に重大な影響を与え、とくに労働生産性についてみると平均収入日額で1万5,048円、労働時間で年12.74時間、経済的損失で年19万1,783円と見込まれるとする報告を紹介した1)。 また、重症スギ花粉症患者では、抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬の標準治療を受けていても症状ピーク期には労働や勉強の能率が約35~60%低下するという報告もあり、社会に影響を与える事態を避けるためにも花粉症重症化には対策をするべきと説明を終えた。オマリズマブなどの作用機序の図など追加 大久保 公裕氏(日本医科大学耳鼻咽喉科学 教授)が、「鼻アレルギー診療ガイドラインの改訂点:最新の治療を教えます」をテーマに今年発行が予定されているガイドラインの内容を説明した。 本ガイドラインは、1993年に初版が発行され、不定期ではあるが最新の診療エビデンスを加え改訂され、最新版は改訂第10版となる。 今版では次の内容の改訂が主に予定されている。【第1章 定義・分類】・鼻炎を「感染性」「アレルギー性」「非アレルギー性」に分類・LAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎を追加 【第2章 疫学】・スギ花粉症の有病率は38.8%・マスクが発症予防になる可能性の示唆【第3章 発症のメカニズム】・前段階として感作と鼻粘膜の過敏性亢進が重要・ARはタイプ2炎症【第4章 検査・診断法】・典型的な症状と鼻粘膜所見で臨床的にARと診断し早期治療開始・皮膚テストに際し各種薬剤の中止期間を提示【第5章 治療】・各治療薬の作用機序図、免疫療法の作用機序図、スギSLITの効果を追加 この中で大久保氏は、とくに治療について厚く触れ、治療目標として「症状がないか軽度、日常生活に支障がない」「症状が安定し、急性の増悪がない」「抗原誘発反応がないか軽度」の状態に患者をもっていくことが必要と語った。また、ARの治療アドヒアランスについて、患者の69%が不良であり、その一因として抗ヒスタミン薬の眠気などの作用を上げ、理想的な抗ヒスタミン薬の要件として「速効性、効果持続」「眠気など副作用が少ない」「安全で長期間投与」「1日1~2回」などを提示した。また、重症花粉症では、抗ヒトIgE抗体オマリズマブについて、症状ピーク時に有意に鼻症状のスコアを改善したことを紹介した2)。 そのほか、アレルゲン免疫療法について、症状を改善し、薬用量が減少しうること、全身的・包括的な臨床効果が期待できること、治療終了後にも効果が期待できることを示し、スギSLITについて、3年継続することで治療終了後2年間の効果持続があったことなどを説明した3)。しかし、SLITでは、即効性がなく、長期治療が必要であること、不安定喘息などには禁忌であること、アナフィラキシーの副反応など注意が必要と短所も示した。 最後に治療法の選択を示し、「主治医とよく相談し、自分に合った治療法を決めて欲しい」と述べ、レクチャーを終えた。花粉症重症化の知識を啓発してゼロにする 川島 佳代子氏(大阪はびきの医療センター 耳鼻咽喉・頭頸部外科 主任部長)が、「花粉症重症化ゼロ作戦2024:我々がこの春の花粉症で行うべきこと」をテーマに今年から始まる「花粉症重症化ゼロ作戦」について説明を行った。 先述のように花粉症では重症患者が多く、間接費用も含めると経済損失など多大な額に上るほか、患者個人にも就業や学業で大きな負担を強いるものとなっている。また、患者もありふれた疾患ゆえに自己流の対処を行っているケースが多く、重症であっても適切な治療がなされていないこともあり、こうしたことが社会的損失を起こす一因となっている。こうした背景から、学会として花粉症の正しい病態、治療について発信することが重要との認識に立ち、今回の取り組みが行われることになったと説明した。 花粉症重症化ゼロ作戦2024の診療の柱としては、・初期療法の重要性を周知・重症化したら併用療法や抗IgE抗体療法にスイッチ・根本治療としてアレルゲン免疫療法などを説明し、実践などが掲げられている。 今後、この取り組みのために特設サイトが開設され、「花粉症重症化とは」「重症化度チェック」「患者の声」などのコンテンツ公開が予定され、市民講座やポスター掲示、地元医師会との連携などを実施、2030年までには目標として「花粉症の重症化ゼロを目指す」と説明を終えた。

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開発中の外用PDE4阻害薬、アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬に有望

 軽症~中等症アトピー性皮膚炎または尋常性乾癬患者において、開発中の外用PDE4阻害薬PF-07038124は、忍容性が良好で有効性に優れることが示された。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のLawrence F. Eichenfield氏らが海外第IIa相無作為化二重盲検比較試験の結果を報告した。アトピー性皮膚炎および尋常性乾癬は、外用治療薬についてアンメットニーズが存在する。外用PF-07038124は、オキサボロール骨格を有するPDE4阻害薬で、T細胞ベースアッセイにおいて免疫調節活性が確認されており、IL-4およびIL-13に対する阻害活性を有している。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年12月20日号掲載の報告。 試験は2020年12月21日~2021年8月18日に、4ヵ国の34施設で行われた(データ解析は2021年12月15日まで)。対象は、軽症~中等症アトピー性皮膚炎(病変が体表面積の5~20%)または尋常性乾癬(体表面積の5~15%)を有する18~70歳の患者とした。対象患者を1対1の割合で、PF-07038124(0.01%外用軟膏)群または溶媒群に無作為に割り付け、1日1回6週間塗布した。 主要エンドポイントは、アトピー性皮膚炎患者についてはEczema Area and Severity Index(EASI)総スコアのベースラインからの変化率、尋常性乾癬患者についてはPsoriasis Area and Severity Index(PASI)スコアのベースラインからの変化で、いずれも6週時点で評価した。安全性は、治療中に発現した有害事象や塗布部位の反応などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体で104例が無作為化された(年齢[平均値±標準偏差]:43.0±15.4歳、女性:55例[52.9%]、アジア人:4例[3.8%]、黒人:13例[12.5%]、白人:87例[83.7%])。・内訳は、アトピー性皮膚炎患者70例、尋常性乾癬患者34例であった。・ベースラインの患者背景は、概してバランスが取れていた。・6週時点において、PF-07038124群は溶媒群と比較して、EASI総スコアのベースラインからの変化率(最小二乗平均値:-74.9% vs.-35.5%、群間差:-39.4%[90%信頼区間[CI]:-58.8~-20.1]、p<0.001)が有意に改善した。・同様に、PASIスコアのベースラインからの変化(-4.8 vs.0.1、群間差:-4.9[90%CI:-7.0~-2.8]、p<0.001)もPF-07038124群が有意に改善した。・治療中に有害事象が発現した患者数は、アトピー性皮膚炎患者の治療群間(PF-07038124群9例[25.0%]vs.溶媒群9例[26.5%])、尋常性乾癬患者の治療群間(3例[17.6%]vs.6例[35.3%])のいずれも同等であった。・PF-07038124の塗布部位反応は報告されなかった。

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乾癬への生物学的製剤、逆説的反応リスクは?

 生物学的製剤による治療を受けた乾癬患者が湿疹を発症する逆説的反応のリスクは、IL-23阻害薬を投与された患者で最も低かった。リスク上昇と関連する因子は、年齢上昇、女性、アトピー性皮膚炎の既往、花粉症の既往であった。全体的には逆説的反応の発生率は低かった。英国・マンチェスター大学のAli Al-Janabi氏らが前向きコホート試験の結果を報告した。生物学的製剤を用いた尋常性乾癬患者の一部で、アトピー性皮膚炎の表現型の1つである湿疹を発症することが報告されている。しかし、そのリスク因子は不明であった。今回の検討結果を踏まえて著者は、「さらなる試験を行い、今回得られた結果を再現する必要がある」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年12月6日号掲載の報告。 研究グループは、生物学的製剤のクラス別の逆説的反応のリスク、リスク上昇と関連する因子を検討する前向きコホート研究を行った。 対象患者は、英国およびアイルランドの皮膚科を受診し、生物学的製剤による治療を受けた18歳以上の成人の尋常性乾癬患者で、データはBritish Association of Dermatologists Biologics and Immunomodulators Registerから入手した。2007年9月~2022年12月に少なくとも1回以上のフォローアップ受診のある患者を適格とした。 逆説的反応による湿疹の発症、治療中断、最終フォローアップまたは死亡までの生物学的製剤への曝露期間を調査。生物学的製剤はTNF阻害薬(アダリムマブ、セルトリズマブ ペゴル、エタネルセプト、インフリキシマブ)、IL-17阻害薬(ビメキズマブ、ブロダルマブ、イキセキズマブ、セクキヌマブ)、IL-12/23阻害薬(ウステキヌマブ)、IL-23阻害薬(グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ)を対象とした。逆説的反応の発生率、生物学的製剤のクラス別にみた逆説的反応のリスク、逆説的反応のリスク因子を、傾向スコア加重Cox比例ハザード回帰モデルを用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・1万3,699例が2万4,997件の生物学的製剤による治療を受けた。・2万4,997件の解析対象の年齢中央値は46歳(四分位範囲:36~55)、男性が57%、総曝露期間は8万1,441患者年であった。・逆説的反応の発生は、273件(1%)であった。・10万人年当たりの補正後発生率は、IL-17阻害薬1.22、TNF阻害薬0.94、IL-12/23阻害薬0.80、IL-23阻害薬0.56であった。・TNF阻害薬との比較において、IL-23阻害薬は逆説的反応のリスクが低かった(ハザード比[HR]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.19~0.81)。一方、IL-17阻害薬(同:1.03、0.74~1.42)、IL-12/23阻害薬(同:0.87、0.66~1.16)では逆説的反応との関連はみられなかった。・年齢上昇(HR:1.02、95%CI:1.01~1.03)、アトピー性皮膚炎の既往(同:12.40、6.97~22.06)花粉症の既往(同:3.78、1.49~9.53)は、逆説的反応のリスクを上昇させた。男性はリスクが低かった(同:0.60、0.45~0.78)。

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非専門医も知っておきたいアトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎の治療では、他の疾患と同様に出口戦略が重要です。治療の目標は、症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持することです。そこまで到達できないときでも、できる限り軽い状態を維持することを目指していきます。「塗っているときはいいけれど、塗らないとすぐに出てくる」のは良いとはいえません。治療方法の3本柱は「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子の検索と対策」です。本稿では、最近の薬物療法を中心に解説いたします。なお、本文中の薬価は2023年12月現在の薬価です。インデックス

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アトピー性皮膚炎の治療総論

アトピー性皮膚炎の治療戦略アトピー性皮膚炎の治療では「寛解」という目標が重要です。それは「症状がない、もしくは症状があっても軽微で、かつ日常生活に支障がない状態」つまり「寛解」を目指すことが大切です。寛解が達成できると、患者さんのQOL(生活の質)などは大きく改善されますので、その目標をしっかり医師と患者さんの二人三脚で達成していきたいものです。寛解維持に向けて多くの患者さんは、外用薬を塗ったら良くなるけど、やめたらすぐ再燃する、ということを外来で話されます。「寛解、再燃」のスパイラルに陥ってしまうと、「やはり良くならない」「治療しても意味がない」と思われてしまい、治療を中断してしまう患者さんがいます。よく知られているように「よくなった」と感じた時点でも、皮膚の奥ではまだ炎症がくすぶっていることが多いのです。患者さんが自己判断で外用薬塗布の頻度を減らしてしまうと、皮膚症状が再燃してしまいがちです。そうならないためにも、私は、アトピー性皮膚炎の中等症~重症の患者さんに対しては、プロアクティブ療法と同時にかゆみの物質を血液で検査する「TARC検査」(保険適応あり)を希望される方に施行しています。これはアトピー性皮膚炎の症状に応じて増減することが知られていますので、TARCが正常範囲内にあることが寛解に向けた1つの数字での「見える化」となるかもしれません。治療方法の3本柱は「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子の検索と対策」です。1)外用薬ステロイド、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストの外用薬を用います。外用薬はFTU(finger tip unit)を考えて使用します。やさしく、すりこまないように塗るのが大切です。私はステロイド外用薬を使わなくても良い状態まで改善させることを治療目標の1つにしています。2)経口薬抗ヒスタミン薬をかゆみ止めとして使うことが多いです。経口JAK阻害薬であるバリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブがアトピー性皮膚炎の治療薬として使用できるようになりました。多くの治療薬が登場して、重症な方にも治療が届きやすくなりました。時にシクロスポリンを用いることもありますが、長期間の使用で血圧上昇や腎臓への負担がかかりますので短期間の使用が望ましいです。3)注射薬(生物学的製剤)デュピルマブやネモリズマブ、トラロキヌマブなどが使用できます。これらの治療薬でかゆみや皮膚症状はかなりコントロールしやすくなりました。デュピルマブは、2021年のガイドラインで維持療法(寛解を維持するための治療)としても推奨されるようになりました。4)光線療法私はナローバンドUVB照射装置やエキシマランプを用いて光線療法を行っています。かゆみの強い部分にとくに効果を発揮してくれます。ステロイドなど外用薬の使用量を減らすことにも役立ちます。5)スキンケア皮膚のバリア機能および保湿因子を回復させることがスキンケアの大切な目的です。私は、スキンケアを重視しています。とくに出生直後から保湿外用剤によるスキンケアを行うことは、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げることも知られています1)。アトピー性皮膚炎の治療を実践していく上で、スキンケアはどの状態のアトピー性皮膚炎であっても大切です。1)Horimukai K. et al. J Allergy Clin Immunol. 2014;134:824-830.プロアクティブ療法とはアトピー性皮膚炎の治療では、炎症を抑える治療で寛解となった後、外観上ほとんど異常がないように見えても潜在的な炎症が皮膚の奥で残っている状態がしばらく続いています。ここで治療をいったん止めてしまう患者さんが多いのですが、この状態で治療を中止してしまうと、すぐに炎症が再燃してしまいます。プロアクティブ療法とは、皮膚炎が軽快した後もステロイド外用薬などの使用を中止せず、しばらくの間お薬を継続する方法です。それにより、皮膚炎やかゆみの改善状態を長期間維持することができ、再発・再燃の頻度や重症化が減ることが期待できます。プロアクティブとは「先を見越した」「予防的な」という意味で捉えられています。反対に、「かゆいときに塗る、かゆくなくなったら薬を止める」というのが「リアクティブ療法」です。軽症のアトピー性皮膚炎では、リアクティブ療法でも十分なこともあります。『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021』においても、プロアクティブ療法は「湿疹病変の寛解維持に有用かつ比較的安全性の高い治療法である」と記載され、推奨度1、エビデンスレベルAと高く推奨されています。プロアクティブ療法のやり方第1段階として、一番大切なことは「寛解導入」すなわち皮膚をツルツルの状態にしてしまうことです。そこではステロイド外用薬を1日2回、きっちりFTUを守って塗っていくことが大切です。光線療法をやる、デュピルマブの注射やJAK阻害薬の内服も重要です。ゴールはかゆみが止まることではなく、寛解することですから、しっかりツルツルの状態を作るまで頑張っていきます。寛解導入のためにはバックグラウンドとして保湿外用薬やスキンケアの継続を行ってくことも大切です。1)プロアクティブ療法を行う上で大切なことプロアクティブ療法はかゆみのあったところ、皮膚が荒れていたところにもステロイド外用薬をはじめとしたお薬を塗ることが大切です。長い期間ステロイドを塗ることへの不安もあると思いますが、20週間実施しても目立った副作用はなかったことも示されています。今はステロイド以外の治療薬もたくさんありますから、副作用が気になった場合は治りにくいところに光線療法を足す、デルゴシチニブやジファミラストなどの薬剤にスイッチするなどの対応が可能になります。2)プロアクティブ療法は患者さんには面倒くさい皮膚症状が寛解していると、お薬を塗るのは面倒くさいと患者さんは思います。ただ、プロアクティブ療法の目的は寛解を維持することですから、皮膚が荒れていたところにも塗っていくことは、再発防止のためには大切です。なお、アトピー性皮膚炎ガイドラインにはこのようにも記載されています。「外来での外用療法が主体となるアトピー性皮膚炎では、患者やその家族は治療の主体である」たしかに、プロアクティブ療法は面倒くさいですし、早く「塗らなくてもいい状態」になりたいはずの患者さんが頑張って毎日塗ることには、とても根気がいるはずですので医療従事者が、その頑張りを少しでも後押しできたらと思います。〔プロアクティブ療法FAQ〕プロアクティブ療法のメリットは?ステロイドの使用量をなるべく少なくして寛解を維持すること。プロアクティブ療法をやっていても痒い場合の対処は?まだ寛解に至っていない状況です。まず寛解導入をやり直しましょう。プロアクティブ療法を行っているとき、保湿も行ったほうが良いか?毎日行ってください!プロアクティブ療法では、いつまでステロイドを使う必要があるか?実は明確な答えがないのです。寛解導入が成功したあと、ステロイドを徐々にタクロリムスやデルゴシチニブなどの抗炎症外用薬にシフトしていき、結果としてステロイドを卒業していく、つまり「卒ステ」というのが目標になると思います。ずっと落ち着いていたのに、急にかゆくなってきた場合の対処は?再び寛解導入を目指してステロイド外用薬をしっかり塗る、光線療法を行う、などの治療を行います。かゆくなくなっても乾燥している部位への対処は?皮膚炎が治りきっていないところも多い可能性があります。しっかり治ると皮膚がツルツルとした柔らかい質感になってきます。ステロイドを終わらせることができましたが、治療薬はいつまで塗ったら良いか?しっかり治った状態をどう維持するか、明確な答えはありません。タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストは長期に外用することに伴う副作用は知られていません。寛解がしっかり維持されていれば、少しずつお薬を塗る間隔をあけながら保湿のみに移行していくのをお勧めします。佐伯秀久ほか. 日皮会誌. 2021:131;2691-2777.

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アトピー性皮膚炎の診療で役立つTIPS

口唇の乾燥アトピー性皮膚炎の患者さんで「唇が乾燥する」という訴えは多いです。それは口唇炎の症状なのですが、リップなどを長い期間使っても治らない患者さんも多数います。なぜなら「唇が乾燥する」状態の患者さんは、唇をなめるクセがあることが多いからです。子供の患者さんに多いのですが、唇やその周りをずっとなめ回すことを繰り返していると、周囲が輪を描くように赤くなります。これを「舌なめずり皮膚炎」と言います。これが長期間続くと口の周囲に色素沈着を来すこともあります。口唇のシミ唇が長い期間荒れている方は、点々とシミができてきます。“labial melanotic macules”や「口唇メラノーシス」と言われたりします。アジア人に多いとされています1)。アトピー性皮膚炎の発症時期が早い患者さんに多い傾向があり、アトピー性皮膚炎があっても、IgEが高い患者さんに唇の色素沈着が多い傾向があります2)。口唇トラブルへの治療の仕方〔口唇炎の治療〕口唇炎に関してはステロイド外用剤を中心に治療していきます。ワセリンを中心とした保湿も有効です。乾燥した感覚がある間は改善するまでステロイド外用剤を使ってみてください。しっかり治った良い状態をワセリンや患者さんに合ったリップでキープすることも大切です。〔口唇のシミの治し方〕口唇の色素沈着にはQスイッチルビーレーザーを使用します。痛み止めのクリームを塗り、レーザーを患部に照射します。治療の所要時間は数分で、1回の治療で終了することが多いです。1)Aljasser MI, et al. J Dermatol. 2019;23:86-89.2)Kang IH, et al. Int J Dermatol. 2018;57:817-821.

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外用薬【アトピー性皮膚炎の治療】

外用薬ではステロイド、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストを用います。外用薬はFTU(finger tip unit)を考えて使用します。やさしく、すりこまないように塗ることが大切です。私はステロイド外用薬を使わなくても良い状態まで改善させることを、治療目標の1つにしていますが、ステロイドを完全に止めてしまうのではなく、継続して治療することで再燃を防ぐことに心がけています。デルゴシチニブ(商品名:コレクチム)デルゴシチニブは、2020年6月24日から使用できる外用薬であり、プロトピック(タクロリムス)以来約20年ぶりの新発売です。ヤヌスキナーゼ阻害薬という、新しいメカニズムの外用薬で、発売から1年が経過し、小児用の0.25%製剤が発売されました。デルゴシチニブは、さまざまな種類のJAKを抑える働きがあります。その効果として、IL-4/13を代表とするサイトカインを抑えることや皮膚バリア機能を回復させることに役立つという基礎研究データがあります1)。デルゴシチニブの安全性について、副作用は比較的少なく、長期投与による皮膚萎縮、多毛などといったステロイドの弱点はまだありません。適用部位の刺激感はまれにありますが、使えなくなるほどのヒリヒリ感は経験しません。また、第III相臨床試験でも副作用発現頻度は、19.6%(69/352例)であり、主な副作用として適用部位毛包炎3.1%(11/352例)、適用部位ざ瘡2.8%(10/352例)、適用部位刺激感2.6%(9/352例)などが報告されています。デルゴシチニブの用法・用量通常、成人には、1日2回、適量を患部に塗布する。なお、1回当たりの塗布量は5gまで、体表面積の30%までとする。そのほか、生後6ヵ月以上のアトピー性皮膚炎の小児にも適応がとれ、小児には2021年6月21日に発売された0.25%製剤の使用が望ましいとされています。ただし、妊婦、授乳婦への使用は「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること」と注意も記載されています。デルゴシチニブの薬価0.25%:1g 139.70円0.5%:1g 144.9円〔ワンポイント〕効果の強さに関してはストロングクラス、すなわちベタメタゾンやタクロリムスと同等程度と位置付けられ、症状がかなり強く、急速に寛解導入したい場合には向いていないことがあります。一方、デルゴシチニブの副作用は比較的少なく、長期投与によるものがないため、プロアクティブ療法などでの使用に向いています。また、光線療法、シクロスポリン、デュピルマブとの併用が可能で、ステロイド外用薬の副作用があるときには、光線療法と併用することでステロイド外用薬の減薬に期待できます。1)Wataru Amano W, et al. J Allergy Clin Immunol. 2015;136:667-677.2)コレクチム軟膏 電子添文(2023年1月改訂(第6版))ジファミラスト(商品名:モイゼルト軟膏)ジファミラストは、2022年6月1日に発売されたホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤の新しい外用薬です。PDE4阻害薬は、細胞の中の細胞内のサイクリックAMP(cAMP)濃度を回復させる薬で、cAMP濃度が回復することで免疫細胞の活性化が抑えられます。また、ジファミラストの第III相臨床試験結果について、投与開始後4週間でInvestigator’s Global Assessment(IGA)が0または1かつベースラインから2点以上減少を達成した患者さんの割合は、38.46%とプラセボ(12.64%)に比べて有意に高く1)、小児では0.3%製剤で44.6%、1%製剤で47.1%といずれもプラセボ(18.1%)に比べて有意に高い効果を得ていました2)。病勢の指標であるeczema area andseverity index(EASI)が50%減少した指標であるEASI50は、4週間の投与で58.24%とプラセボ(25.82%)に比べ、有意に高くなりました。同様にEASI75は42.86%(プラセボ13.19%)、EASI90は24.73%(プラセボ5.49%)でした。4週後の平均EASI改善率は−49.1%(プラセボ−10.5%)でした1)。ジファミラストの安全性としては、色素沈着障害(1.1%)、毛包炎、そう痒症、膿痂疹、ざ瘡、接触皮膚炎が記載されています3)が、明らかに多い副作用は認められませんでした1,2)。ジファミラストの用法・用量15歳以降は1%製剤を使用します。14歳以下は0.3%か1%製剤を使用します。通常、成人には1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します。小児は0.3%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します。また、症状に応じて、1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布することができます3)。ジファミラストの薬価0.3%:1g 142.00円1%:1g 152.10円〔ワンポイント〕使用感について患者さんからの評価は良く、塗った際の刺激感を訴えられることはありませんでした。効果に関しても総じて好印象でした。1)Saeki H, et al. J Am Acad Dermatol. 2022;86:607-614.2)Saeki H, et al. Br J Dermatol. 2022;186:40-49.3)モイゼルト軟膏 電子添文(2023年6月改訂(第3版))

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経口薬【アトピー性皮膚炎の治療】

経口JAK阻害薬では、ウパダシチニブ、バリシチニブ、アブロシチニブがアトピー性皮膚炎の治療薬として使用できるようになり、重症の患者さんにも治療が届きやすくなりました。時にシクロスポリンを用いることもありますが、長期間の使用で血圧上昇や腎臓への負担がかかりますので短期間の使用が望ましいです。ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)ウパダシチニブはJAK1を阻害する薬剤です。通常は15mg錠を1日1回1錠、毎日服用しますが、患者さんの状態によっては7.5mgへの減量が可能です。アトピー性皮膚炎に限って倍量の30mgを処方することができます。ウパダシチニブの薬価7.5mg:2594.6円/錠15mg:5089.2円/錠30mg:7351.8円/錠バリシチニブ(商品名:オルミエント)バリシチニブはJAK1/JAK2を阻害する薬剤で、皮膚科領域ではアトピー性皮膚炎と円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合限定)に適応があります。用量は4mgを1日1回経口投与する。状態に応じ適宜減量となっています。相互作用がありますので、プロベネシドを内服している患者さんは減量が望ましいとされています。バリシチニブの薬価2mg:2705.9円/錠4mg:5274.9円/錠アブロシチニブ(商品名:サイバインコ)アブロシチニブはウパダシチニブと同じくJAK1を阻害する薬剤です。50mg、100mg、200mgの3剤形があり、通常用量の100mgから増やしたり減らしたりできます。状況に応じて柔軟な処方ができるのは利点です。適応はアトピー性皮膚炎のみになります。アブロシチニブの薬価50mg:2587.4円/錠100mg:5044円/錠200mg:7566.1円/錠〔アトピー性皮膚炎でのJAK阻害薬処方の注意点〕診療ガイドラインでは、次のように定められています。JAK阻害薬の内服は、「事前に十分な外用薬などの治療を行っていても難治であった方」が対象となります。今まで何もやっていない方であれば6ヵ月程度はガイドラインに沿った外用薬による治療を行い、それでも改善しない場合に使用します。投与の要否にあたっては、以下に該当する患者であることを確認する必要があります。(1)アトピー性皮膚炎診療ガイドラインを参考に、アトピー性皮膚炎の確定診断がなされている。(2)抗炎症外用薬による治療では十分な効果が得られず、一定以上の疾患活動性を有する、または、ステロイド外用薬やカルシニューリン阻害外用薬に対する過敏症、顕著な局所性副作用もしくは全身性副作用により、これらの抗炎症外用薬のみによる治療の継続が困難で、一定以上の疾患活動性を有する成人アトピー性皮膚炎患者である。a)アトピー性皮膚炎診療ガイドラインで、重症度に応じて推奨されるステロイド外用薬(ストロングクラス以上)やカルシニューリン阻害外用薬による適切な治療を直近の6ヵ月以上行っている。b)以下のいずれにも該当する状態。IGAスコア3以上EASIスコア16以上、または顔面の広範囲に強い炎症を伴う皮疹を有する(目安として頭頸部のEASIスコアが2.4以上)体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上同時に、投与できる施設も決められております。次に掲げる医師要件のうち、本製剤に関する治療の責任者として配置されている者が該当する施設です。ア)医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に、5年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っていること。イ)医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に6年以上の臨床経験を有していること。うち、3年以上は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修を行っていること。また、日本皮膚科学会でも届出制度を作っています。乾癬の生物学的製剤のように承認制度は設けていませんが、薬剤の特性上、下記の要件を満たした上で届出した上で、使用することになっています。1)皮膚科専門医が常勤していること2)乾癬生物学的製剤安全対策講習会の受講履歴があること3)薬剤の導入および維持において近隣の施設に必要な検査をお願いできること

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